岬ちゃん早く来てくれ!

学校出てから十余年、今じゃワープア低賃金。

Winnyを見てきた。

 ファイル共有ソフトWinnyを公開したことで著作権法違反幇助の罪に問われた開発者の裁判を舞台にしている。警察や検察が嘘の申述書を書かせたり調書にサインさせたりといった今に至る刑事司法の問題点を批判しながら映画は展開していく。本作では一審有罪判決までを映画化している。劇中でははっきりと語られなかったけれど、当時逮捕は京都府警の警官がWinny経由で情報流出してしまった件の意趣返しだって批判があったような。

 最高裁まで争った上に本人は亡くなっているのでそう描くしかないのだろうけれど、技術的挑戦のために作ったソフトが図らずも不正なファイルのやり取りに使用された結果、警察に責任を取らされたと言いたげな内容はどうなんだろうなと思ってしまった。WinnyWinMXの後継として開発された事や一貫してグレーな使われ方をした経緯を知ると「日本社会のためにWinnyを開発した」は空々しく聞こえてしまう。映画も例の開発宣言を書き込みする場面から始まるし。

 金子氏の裁判と並行して特に接点のない愛媛県警の裏金作りを警官が嫌がらせに遭いながら告発しようとする話が描かれていてなんだこれはってなるんだけれど、Freenetと絡ませる事で匿名性の必要性を訴えたかったのかもしれない。

 Winnyがどういう目的で使われていたのかが「不正コピーしたファイルの蔓延」みたいな抽象的な表現で漂白されていて当時のアングラ感が薄まっているのは残念。かの2ちゃんねるも有志が訴訟費用をカンパしたという良い話風で登場するにとどまっている。

 主演の東出昌大の好演もあって、金子氏がやたらキラキラしたエンジニアとして描かれているのだけれど、Winnyの負の側面を誤魔化しているように見えた。包丁で殺人が起きても包丁製作者に罪はないという所謂包丁理論は法廷戦術のための方便であって、最初からそういう目的だったでしょ。